心理カウンセリングに関する資格の最高峰とも言われる臨床心理士。心理療法のエキスパートとして現場で活躍できるほぼ唯一の資格ですが、その取得にはどういった条件が求められるのでしょうか。
今回は、これからカウンセリング業務などに携わりたいとお考えの方に向けて、臨床心理士の取得方法や取得を目指すうえでおすすめの大学や通信講座などを徹底的に解説します。
日本臨床心理士資格認定協会の記述も参考に、できるだけ分かりやすく解説していきますので、臨床心理士を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
臨床心理士とは

資格の取得方法について見る前に、まずは臨床心理士という資格がどのような資格なのか確認します。
臨床心理士をわかりやすく言うと「心の専門家」
臨床心理士は、臨床心理学にもとづく知識や技術を活用して、人間が抱える心の問題を解決するための「心の専門家」です。
臨床心理士を認定している日本臨床心理士資格認定協会では、臨床心理士に求められる専門行為として次のものを掲げています。
- 臨床心理査定:心理テストなどを適切に用いて、その人にアプローチを提案できる
- 臨床心理面接:いわゆるカウンセリング。個性や悩みの特性にあった技法を用いるなど的確な支援ができる
- 臨床心理的地域援助:地域の心の健康活動にかかわる人的援助システムのコーディネーティングやコンサルテーションにかかわる能力を保持している
- 1~3に関する調査・研究:技術的な手法や知識を確実なものにするために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動ができる
なお、知識や技術、人間性の向上と維持に努めるため、臨床心理士は5年ごとの資格更新制度なども定められています。
臨床心理士を取得するメリット
臨床心理士を取得するメリットは、なんといっても活躍の場が多いという点です。
次の分野や、臨床心理士を取得した人だけが活躍しているわけではありませんが、求人情報などを見ると応募資格として「臨床心理士」が基本的に挙げられています。
心理療法に関わる仕事をするのなら、臨床心理士を取得しておけば間違いないと言えるのではないでしょうか。
- 教育分野:小・中・高校のスクールカウンセラー、教育相談機関など
- 福祉分野:児童相談所、福祉センターなど
- 医療・保険分野:精神科・心療内科など
- 民間:産業カウンセラー・カウンセリングルームなど
臨床心理士と他の資格の違い
臨床心理士と他の資格との違いに関しても簡単に見ていきましょう。
臨床心理士と公認心理師の違い
臨床心理士が民間資格であるのに対して、公認心理師は国家資格です。
民間資格と国家資格という比較では単純に国家資格のほうが信頼性がありそうですが、この2つは認知度に差があるため、2020年1月現在ではまだまだ臨床心理士のほうが実際の現場で重宝されている印象があります。
具体的には、臨床心理士が昭和63年に作られたのに対し、公認心理師は平成28年に第1回試験が実施されたばかりの比較的新しい資格です。
ただ、実際の求人情報を見るとすでに「臨床心理士・公認心理師」と応募資格に併記されていることがほとんどのため、これから取得を目指すなら公認心理師でも問題ないと言えそうです。
臨床心理士と認定心理士の違い
臨床心理士が試験によって認定される資格であるのに対し、認定心理士は「指定の学科で一定の単位を修了したこと」を示す資格です。
条件を満たした人ならば、申請するだけで試験不要で認定されるので臨床心理士に比べるとだいぶハードルは低め。そのため、認定心理士の資格だけで臨床心理士と同様の資格につくのは難しいです。
ただ、「心理学が得意である」とアピールするには十分な資格なので、カウンセリング業務に実際に携わることを目指すのでなければ、認定心理士取得を目指すというのもひとつの手でしょう。
臨床心理士と心理カウンセラーの違い
臨床心理士は資格の名前、心理カウンセラーは職業の名前です。
そのため、心理カウンセラーの中にも臨床心理士資格を持った人がたくさんいます。
なお心理カウンセラーを名乗るうえではそもそも資格が不要なので、心理カウンセラーになるために臨床心理士資格が必要なわけではありません。
ただ、実績を積むためには臨床心理士をはじめとする信頼性の高い資格がなければ心理カウンセリング業務を任せてもらえないため、何かしらの資格が必要になるケースが多いということです。
臨床心理士になるには

それでは実際に、臨床心理士になるためには何が必要なのかチェックしていきましょう。
受験資格は「大学院修了」と「臨床経験2年以上」
臨床心理士になるためには、日本臨床心理士資格認定協会の実施する資格試験に合格する必要があるのですが、この試験には受験資格が求められます。
求められる主な受験資格は、次の通りです。
- 指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者
- 臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
- 諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者
- 医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者
なお指定大学院の詳細に関しては、「臨床心理士受験資格に関する指定大学院・専門職大学院一覧」などで検索してご確認ください。
試験は一次と二次の2種類。いずれも実践的な知識と技術が問われる
受験資格を得ることができたら、そこからは必要書類を用意して受験申請します。
試験は一次筆記試験と二次口述面接試験に分かれていて、それぞれ試験の概要は次の通りです。
- 一次筆記試験:100問選択式のマークシート(2時間半)と論文記述試験(1時間半)の2種。暗記よりも実践的な総合力が問われる。
- 二次口述面接試験:個別に時間指定して実施。クライエントを前にした「実践」の心構えで臨むことが推奨されている。
資格取得後も常に学び続ける生涯学習が求められる
臨床心理士は、人の心を扱うという専門性の高い業務性質上、臨床心理士としての倫理綱領をふまえて専門家としての厳しい自覚を持ち続けることを求められます。
言葉のうえだけでなく、制度としても5年ごとの資格の再認定が設けられており、生涯学習が必須の資格です。
試験日程は10~11月。合格発表は12月ごろ
臨床心理士試験は、年に1回実施されており、おおまかなスケジュールは7~8月に申し込みを開始し、10月に一次試験、11月に二次試験を実施して、12月に合格が発表されます。
下記は、2019年度の実際の日程です。2020年度の日程はまだ発表されていませんが、例年通りであればほぼ同様のスケジュールになると思われます。
資格審査申請 書類請求期間 | 2019年7月8日~2019年8月16日 |
受験申込 受付期間 | 2019年7月9日~2019年8月31日(当日消印有効) |
筆記試験 (一次試験) | 2019年10月12日(土) 東京ビッグサイト(東京都江東区有明3-11-1) |
口述面接試験 (二次試験) | 2019年11月9日(土)、10日(日)、11日(月) 東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内3-5-1) |
合格発表 | 2019年12月下旬予定 |
合格率は60%強とそこそこ高いが、難易度もそれなりに高い
臨床心理士は心理系資格の中でも高い信頼度を誇りますが、合格率で見ると60%強と決して低くなく、最難関とされる司法書士などの4%といった合格率に比べると、かなり現実的な数字と言えます。
ただし、臨床心理士のハードルを高くしているのは「指定の大学院」か「それと同等の大学院」を修了していることが必須という点で、受験者は全員そのハードルをクリアしているということです。
そのうえでこの合格率ということは、やはり相応の難易度であると考えたほうがよいでしょう。
臨床心理士になるためにかかる費用

最後に、臨床心理士になるためにどれくらいの費用が掛かるのかを考えてみたいと思います。
指定大学院の授業料+資格申請費用=約200万が必須
臨床心理士の受験資格を満たすため、最低でも指定大学院の授業料およそ200万円弱に加え、資格申請費用である8万円程度が必要になります。
さらに、大学を卒業していない場合はその前に4年制大学に通う必要があり、通信課程などを選択し費用を抑えたとしても約100万円程度はかかるでしょう。
そのため大卒から目指すなら200万円、高卒から目指すなら300万円程度はおおよそ必要になると考えられます。
臨床心理士は独学でも取得できる?対策講座は必要?
では指定大学院にさえいけば臨床心理士になれるかというとそうとも限らないようで、「臨床心理士になるための対策講座」も多く出回っています。
果たして、大学院まで修了したうえでこういった対策講座などを利用する必要はあるのかというと、決して必須ではありません。
ただ、効率的な試験対策ができることも事実ですので、不安な方は一考の余地があるでしょう。
問題集などの書籍で一度勉強してみるか、下記のようなサイトの練習問題に挑んで、必要を感じた場合はぜひ検討してみてください。
まとめ
今回は、臨床心理士の資格概要から、受験資格・合格率・難易度・かかる費用などについて解説しました。
調べた印象として、やはり大学+大学院修了まで必須というのはかなりハードルが高く、現場での信頼性が高いのも頷ける資格だなと感じます。
一方で、現在は認知度の差で臨床心理士のほうが重宝されているものの、今後は国家資格である公認心理師が注目される可能性も高いです。
これからどちらを取ろうかと迷っている方は、可能であれば両方の取得を視野に入れることをおすすめします。
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